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技法

[乾漆]

日本を代表する仏像の傑作の多くは天平時代に創られました。この時代特有の仏像の造形技法が乾漆です。像の概形を木彫でつくり、その上に麻布と漆を何層も塗り重ね、成形していく技法です。漆の硬化には漆風呂と呼ばれる高湿度条件を保てる乾燥室が必要で、その制作は手間と時間が非常にかかりました。そのうえ金の次に高価だった漆を大量に使うので、乾漆技法は平安時代には途絶し、仏像の制作技法は木彫へと変化していきました。
現在実存する乾漆像は世界的に希少で、中国、東南アジアには皆無です。日本においても「聖林寺 十一面観音像」「唐招提寺 千手観音像 薬師如来像」など数点が残されているだけです。

[蒔絵] [金箔]

金箔は金をたたいて極限まで薄くのばした日本独特の技法で、これを漆で接着して使用しました。蒔絵は漆で描いた画に金や銀の粉をまいて装飾する技法です。
16世紀後半、日本に渡来したヨーロッパ人は漆と金箔で造られた建築や家具に驚愕し、マルコポーロ伝説を思い出しました。マルコポーロは金箔や漆を知らなかったので、純金で造られた都市だと思って「ジパング伝説」が生まれたのでしょう。しかし実際にはそれは漆と金箔でした。
そして人々は磁器を「チャイナ」と呼んだように、「漆」を「ジャパン」と呼んだのです。

[漆]

漆はウルシ科の樹木から採取される樹液からつくる塗料です。多湿な気候の日本では漆は耐久性に優れた朽ちない食器として古くから使われてきました。
日本には器に口を直にあてて汁をすする文化がありますが、これは漆が暖かく柔らかいため、唇に触れても心地いい素材であった事から生まれた文化です。
漆はまた、そのまま触るとかぶれることから邪気を寄せつけない魔力があると信じられてきました。福井県では6500年前の漆でできた遺物が出土しており、漆の耐久性を証明しています。日本人は漆の黒、漆黒に宇宙を感じ、仏教伝来とともに漆で仏像を作るようになりました。漆は仏像の魂の器となったのです。